google.com, pub-2410791026450572, DIRECT, f08c47fec0942fa0 【エピソード・オブ・あやめ】勇者、恋に落ちる瞬間(アツキ視点) アツキのFIREまでの道 atsuki-blog.com

【エピソード・オブ・あやめ】勇者、恋に落ちる瞬間(アツキ視点)⸻後半

キャラクター小説編(長編ストーリー)

第五章 ― デート三部作

1回目:デパート

待ち合わせは駅前。

心臓が無駄にバクバクして、姿勢もなぜか軍人みたいにまっすぐになっていた。

(お、落ち着け俺……デートだ、デート……!)

最上階から順番に回ることになって、雑貨フロアをうろうろ。

それなりに会話もできてホッとしていたところで――運命の出会いがあった。

子ども向け帽子コーナー。

並んでいるクマ耳ニット帽が、なぜか俺に「かぶれ」と語りかけてきた。

気づけば手に取って、頭にのせていた。

「どう?似合う?」

あやめは一瞬固まってから、口元を押さえて笑いをこらえている。

(お?ウケてる?)

調子に乗って、うさ耳、王冠、消防士ヘルメット――次々に“のせ芸”を披露する俺。

店員さんまで笑いをこらえてるのが視界に入って、もう止まれなかった。

(……これ、完全に俺、スベってる?)

でも、そのとき聞こえた。

「さっきのより百倍マシ」

彼女がぽつりと本音を漏らした瞬間、心臓がドキンと跳ねた。

フードコートでクレープを食べるときも、

「おすすめは?」って聞いたら「いちご生クリーム」って即答。

素直にそれにすればよかったのに――俺は「照り焼きチキンに生クリームちょい足し」を提案してしまう。

「やめなさい。世界のバランスが崩れる」って即ツッコミ。

……あの笑顔を見られたから、悪くない。

帰り際、信号が変わりそうになったとき、とっさに腕を出して彼女の前に立った。

「急がなくていいよ」

そう言った自分の声が少し震えていたのを、彼女は気づいただろうか。

(今日はただ楽しかった。それだけのはずなのに――なんか、もっと一緒にいたい)

2回目:映画館

二回目のデートは映画館。

「今日は失敗しないぞ」って意気込んでたのに――やらかした。

ポップコーンを買って、席に着いた瞬間。

手がすべって、床にばらまく大惨事。

(おいおいおい!なんで今日に限って!?)

必死に拾おうとする俺の横で、あやめは口元を押さえて笑っていた。

……恥ずかしい。でも、その笑顔が見れたから、まぁいいか。

上映前、予告映像が流れ出す。

隣から小さなすすり泣きが聞こえてきた。

――え、まだ本編始まってないよ!?

ハンカチを慌てて差し出す。

「ちょ、ちょっと早くない?」って小声でツッコミを入れると、あやめが照れ笑い。

(……やばい、可愛い)

こっちがドキドキして落ち着かない。

本編が始まると、今度は俺が真剣に見入ってしまった。

ストーリーが進むにつれて、胸の奥が熱くなる。

気づけば感想を口にしていた。

「やっぱさ、人って諦めないのが大事なんだよな」

横を見ると、あやめがじっと俺を見ていた。

その瞳に映る自分が、ちょっとだけ誇らしくて。

(……次は、もっとかっこいいところ見せたい)

3回目:夜景の公園

三回目のデートは、夜景の見える公園。

ここまで来て、俺の胸の中はずっとざわざわしていた。

(今日こそ言わなきゃ。

 これ以上、曖昧にしてたら絶対後悔する)

歩道のライトに照らされる横顔のあやめは、街の光よりもきれいに見えた。

その横で、俺は緊張しすぎて何を話したのか覚えていない。

ただ、心臓の音だけが耳の奥で響いていた。

しばらく歩いて、ふと立ち止まる。

夜景の広がるフェンスの前。

ポケットの中で手のひらが汗ばんで、言葉が喉につかえる。

(怖い。

 断られるかもしれない。

 でも――言わなきゃ)

意を決して顔を上げる。

「俺は……あやめのことが好きだ」

声が震えた。

それでも目を逸らさず、続ける。

「俺のこと、男として見てくれ。

 よかったら……付き合ってくれ!」

一瞬、時間が止まったような気がした。

あやめは言葉を返さなかった。

ただ、静かに頷いた。

その瞬間、胸の奥が熱くなって視界がにじんだ。

「……ありがとう」って言う前に、涙が頬を伝っていた。

情けないと思ったけど、止められない。

そんな俺の涙を、あやめがそっと拭ってくれた。

「男でしょ? 泣かないの」

強がるような声。

でも、その笑顔は今までで一番優しかった。

(あぁ……この人を絶対に幸せにしたい)

その夜、俺たちの物語は新しいページをめくった。

エンディング ― めでたし…?

翌日。

ざとがスーツ姿で現れた。

「お二人のために結婚式場の資料を用意しました」

「はえーよ!!」

結局、俺とあやめで同時にざとを殴り飛ばす。

レストランの厨房に笑い声が響いた。

(でも、この恋は本物だ――)


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